登れば登るほど薄くなる空気に息を切らし、極度の疲労の中、唯一、船長家の励みとなるのは、山頂での冷えた缶ビール!目標が達成されるまで、決してあけることは許されない禁断の飲料、それをかつぐのは、私。船長による巧みに計算された「馬に人参」作戦だと思われる。
そして、めでたく、登頂。
だが、そこからが正念場。かろうじで存在している残雪に缶ビールを埋め、冷やす間、「待て。」を強いられる。まさに「お湯を注いで3分」の心境だ。早く口にしたい葛藤と激しく戦いながらも、完璧を求めることは妥協できない。それは、一口にかける熱き情熱とも言える。
私 「ねぇ、まだ?」
船長 「もう少しです。」
私と船長 「・・・・・・・・・。」
疲労のため、そんな最小限の言葉を交わすのみ。恐らく景色を楽しむにもってこいの沈黙の時間なのだろうが、どうにもこうにも、体が欲しているものがはっきりし過ぎているため、他のことに集中できないのである。まるで焦点が合っていないかのように、景色のビジョンがボケる感じ。
船長による、「待て。」の指示が解除されるや否や、泡が吹き出す缶に素早く口をつける。
喉を走る爽快感。その瞬間、景色がどかんと目の前に現れ、達成感が波のように押し寄せてくるのだ。
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